◆あなたに一粒チョコレート◆

「瑛太って好きな人とか彼女とか、いるのかなあ……」

「そうだ!」

私が数メートル離れている瑛太を見つめながらそう言うと、菜穂が握った手をもう一方の手の平でポン、と打ち鳴らした。

「なによ?!」

「本人に聞きゃいーじゃん」

「誰が」

「春が」

「えーっ!私?!」

思わず叫んでから再び瑛太を見ると、偶然眼が合ってしまった。

「あ」

「……」

瑛太も僅かに眉を上げる。

真っ直ぐな瑛太の眼差し。

眼がそらせない。

……こんなに長く、真正面から瑛太を見つめたことなんてあっただろうか。

こんなに男らしい顔立ちだった?こんなに切れ長の眼をしてた?

口元だって、キリッとしていて……。

わからない。思い出せない。

その時、

「川瀬」

反対側から誰かに声をかけられて、私は思わずビクッとした。