ーー"大丈夫。"

彼の低く響くような声が、耳元で囁いたことを思い出して。

ばっと勢い良く左耳を押さえて、屋上から視線を逸らした。

でも、またちらっと屋上に目を向けては、その後ろ姿にぼうっと見蕩れてしまう。

「ーー水原さん」

「ひゃっ、はい!」

「立たなくていいですよ。もし、具合が悪いなら保健室に……」

「だ、大丈夫です。すみませんでした!」

ばくばくと激しく脈打つ胸の鼓動を、ぎゅうっと押さえつける。

( 見てるの、ばれたかと思った…… )

日頃の行いのせいか。

先生は、授業を真面目に聞いていなかったことは咎めなかった。

「無理しないでね」と優しい言葉を頂いて、すとん、と席に腰を下ろす。