膝に置いた腕に隠れるように、顔を横に向けて彼女から視線を逸らす。

( 何なのそいつ……羨ましすぎでしょ )

彼女の想い人を全力で排除しようと目論む俺に、変わらない距離のまま、「相良君」と彼女の震えがちな声が俺の名を呼んだ。

心が浄化される。

素早く不穏な考えを振り払って、「ん?」と尋ね返した。

彼女を見るだけで緩んでしまうこの頬を、どうにもできないのが、恋なのか……

「……相良君は、好きな女の子、いるの?」

消え入りそうなほど小さい彼女の言葉に、目を見開く。

ーー俺の好きな人、気になるの?

( まさか、ね…… )

そう思いながらも、少しだけ期待してしまう。

彼女の頬が、少し赤く見えるのは俺の気のせいか。夕日のせいか。

ーーそれとも。

「……いるよ。凄く、好きな女の子」

試すような言い方をした。

( ……俺は弱いから、素直に言えないんだ )

ねぇ、だから……君の反応を見せて。

( ーー願わくば、俺だけに )

「……そ、そう、なんだ?」

あと、少し。

もう少しで、分かりそうなんだ。