ーーあいつには、良い機会だと思った。

「美鈴君と知り合い?」

教室で、そう言った彼女の言葉に、ぴくっと反応した美鈴を見た時から。

( 多分、今頃…… )

「ーー相良君?」

ここにいない二人に思いを馳せていると、目の前に、不思議そうに首を傾げる彼女がいた。

少し驚いて、一歩後ずさる。

凄く近い距離に、その細い腕を引き寄せてキスしたくなる。

( 付き合ってもないのに、出来ないけどね! )

どうせヘタレですよ。と誰にも聞かれていないのに心の中で不貞腐れる。

ーーあぁ、彼女が俺を好きになってくれたらどんなに幸せだろう。

「……由李ちゃん、好きな人いないの?」

「へ!?」

「あ、その反応はいるね」

聞いといて、答えが凄く怖い。

平気なふりして笑うけど、心の中はばくばくと激しく音を立てて暴れ回る。

知りたいような、知りたくないような。

ーー答えないで。

そう思う俺は、きっと誰より弱い。

「……うん」

恥じらうように、こくんっと頷いた彼女を独占したくて堪らない。

( ……俺、馬鹿なの。何、自分で聞いて落ち込んでんだよ )

思わずしゃがみ込んで、はぁ、と深く溜息を吐く。