「あのね、宮ちゃ、」

「ーーあんたねぇ!」

彼女は病み上がりとは思えないほど大きな声で二人を睨みつけた。

彼らが普通科だから誤解しているんだと思って、私は彼女を宥めるように背中を摩った。

「違うよ宮ちゃん、二人はね、」

「女の子の鳩尾殴る男なんて、最っ低よ!」

「そうなの、鳩尾をーー……え、鳩尾?」

ーーまさか。

私は、「嘘だよね?」という思いを込めて、そろりと二人の方を振り返った。

けれど、相良君は困ったように曖昧に笑ったまま。

美鈴君は仕方無さそうに溜息をついて、「悪い」と謝罪した。

……鳩尾、殴ったんだ。

( だからさっき、「ごめんなさい」って…… )

彼女はもうお腹を押さえてはいない。

きっと、彼女の言う"昔"の賜物だろうことは容易に想像がついた。

けれど。

殴られたことがないから分からないけど、きっと痛かっただろう。

男の子に殴られる痛みを想像して、無意識に自分のお腹を摩ってしまう。