それから彼女は、私が苛められる度に助けてくれた。

彼女の瞳は、相手が彼女の言葉に煽られるにしたがって冷たさを増した。

中学に上がると、その冷たさは刻刻と増して。

ーーある時、弾けた。

「宮ちゃん!もう止めて……宮ちゃんってば!」

彼女の手には、相手の血がついていた。

私を襲おうとした、知らない男の人。

殴り続ける彼女の腕にしがみついて、必死で止める。

けれど、彼女は歪に笑ったまま、手は止まらない。

「宮ちゃん、もうーーーっ!」

「ーーっ!?」

彼女の拳が、頬に深く沈む。痛みと衝撃で口の中までびりびりして、血の味がした。

彼女の瞳に、暖かさが戻る。けれど同時に、深い罪悪感と心配そうな色をもっていた。

男の人は涙を流しながら呻いて、這いつくばるように逃げていった。

それを追いかけることもなく、宮ちゃんは頭を抱えてしゃがみ込んだ。

様子のおかしい宮ちゃんに、恐る恐る近付いて、その細い肩にそっと触れる。

「み……宮ちゃん……?」

飛び上がるように驚いた顔を向ける彼女の瞳に、もう冷たさは残っていなかった。

「馬鹿っ、何してーー!」

「ふふ……いつもの、宮ちゃんだ」

へらっと笑うと、つられたように彼女も苦笑いを返してくれる。