チャイムと同時に体育教師の「休憩」との言葉を頂戴し、それでも止めずに走り回る皆から、少し離れたベンチに腰を下ろす。

「あいつら、若いねぇ」

「おっさんかよ」

そう言って隣に腰掛けると、美鈴は首に巻いたタオルで汗を拭った。

二人して水筒を忘れて、喉はからから。

「あっつ……」

「……俺、冷水機行ってくる」

「待って、俺も」

先に腰を上げた美鈴について、体育館横の冷水機で喉を潤す。

それから外に設置してある手洗場で、ざばざばと髪を流すと、一気にひんやりして気持ち良かった。

美鈴も真似して、横でざばざばと髪を濡らし、前髪を掻き上げた。

「おお、これが水も滴るいい男」

「あー、冷てぇ。気持ち良い」

髪が水に濡れて、いつもに増して色気漂う美鈴を凝視していると、美鈴は嫌そうに顔を顰めた。

「……んだよ」

「何か、お前が言うと卑猥ーーった!」

それなりに強く叩かれて、恨めしくじとーっと睨む。

俺の視線に気付いていながらも、飄々とした態度で隣を歩く美鈴は、突然何かに気付いたようにある方を見つめた。

グラウンドのフェンスの向こう側に集まっているのはーー女の子?

( あれは普通科の……田村達か )

その中にあの子の姿もあって、思わず頬が緩みそうになったところで、その険悪な雰囲気に眉を顰めた。

「あの馬鹿……」

ちっ、と悪態を吐く。

珍しく感情を表に出した美鈴に、少し呆気にとられてから、直ぐに気を取り直した。

「止めに行く」

「あぁ」

そして俺達は、走り出した。