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「ひどい顔。鏡見てきたほうがいいんじゃない」



本多くんが、中島くんに向けた第一声はそれだった。


中島くんはそれに「お前もな」と返して、それから「ごめん」と小さく謝った。



「最低なことした」

「許すわけないでしょ。……でも、いいよ。全部わかってる」


わかってる、と本多くんは繰り返した。
そしてふと問いかける。



「あのさ。市川さんの店のステンドグラス、あるじゃん、おれがつくったやつ」

「ああ……お前の誕生日にね」


「あのブルースター……中島が一緒に選んでくれたんだよね。花言葉、なんだったか覚えてる?」



ええとたしか……幸福な愛、だったっけ。


三成が言っていたのを思い出す。

だけどそれは、あたしに向けられた問いかけではなかったから黙っていた。



「知るかよ」

「………」

「……嘘だよ覚えてる。幸福な愛……あと、もう一つは、“信じ合う心”」



しばらくして、中島くんは一言「死ね」と呟いた。

くす、と本多くんが笑う。



「───て、いうか、そろそろふたりにしてくれない?」



突然、手首を掴まれた。

冷たい体温。

なんの心の準備もしていなかったあたしは、固まるしかなく。



「勝手にやってろ」


舌打ちをした中島くんが病室を出ていった。


急に心拍数があがる。

まさか、ふたりきりにされるなんて予想もしていなかった。