「……三成と一緒に来てたんだね」


黒い瞳が、今度は遠慮がちにあたしを捉えた。
それに対して、ぎこちなく頷くことしかできない。



「電話……出れなくてごめん。それと、」

「大丈夫。謝らなくて、いいよ」


自分が思うよりも、ずいぶん気が焦っているのかもしれない。

途中で遮ってしまった。謝られるほうが何倍もみじめだと、わかっているから。


後ろめたさからくる優しさなんて、もう懲り懲り。……見たくない。



「本多くんには、何回も助けてもらって、本当に、感謝してもしきれない……」


口角をきゅっと上げれば済む話なのに、感情と反対の表情は保つのが難しかった。


それでも精いっぱい、笑ってみせたつもり。


「今までありがとう、」


目の奥がじわりと熱くなり、咄嗟にうつむいて背を向けた。

そのまま部屋を出ていこうとすれば、直後、ギシ……とスプリングの軋む音が聞こえる。



「──待って、」


熱のせいか、触れた手のひらから伝わる温度は 、あたしが知っている本多くんのものより少しだけ高い気がした。