黒い蘭の刺繍。
それが黒蘭の構成員である証──。
「俺の中学の制服にはソレが付いてる。まだ族抜ける前だったからな」
きっと、本多くんが抜けたから一緒に黒蘭を出たんだろう。
「今の黒蘭のトップはイカれてる。……さっき言った深川のことな」
ため息をひとつ零して三成は続ける。
「七瀬も大概だけどな」
深川──というのが、黒蘭の現・総長……。
この人が原因で、本多くんは黒蘭を出て行った──。
記憶を整理していると、ふと、ある事が頭に引っかかった。
「ねえ、慶一郎さんは黒蘭“会”のトップなんでしょ?」
「あ? そうだな」
「だったらその深川っていう人を辞めさせるとか……できないの?」
「あー、無理だな」
即答。
「同じ黒蘭でも、“会”と“族”は全く別の組織なんだよ。慶一郎さんの権力はバカでかくても、“会”の人間が“族”に口出しすることはまずない」
「どうして?」
「首突っ込んで、内部で反乱が起こるのが一番面倒だからだ。組織のいざこざはその組織内で解決する、周りを巻き込まない。暗黙のルールだ」
三成がそこまで説明をしたとき、あたしのスマホがぶるっと震えた。
画面を見て、びくりとする。
そこに
“ 本多七瀬 ” という文字が並んでいたから。