「お前が優しさとか言ってチョコくれたんだから俺も優しさのお返しってだけだよ。別にお前のチョコが欲しいとかそういうんじゃなくて」







こんなに必死に言う酒井は初めて見たかもしれない。









「しょうがないな、万が一渡せなかったらあげるね」







そんなことを言っていても心臓はドキドキうるさい。








「おう」







短く返事をして酒井はお弁当の続きを食べ始めた。








本命チョコ、渡せないけど絶対に渡せるんだ。








酒井にとっては私は本命の人に渡せなかったように見えるんだろうな、きっと。








私は何度も何度も、さっきの酒井の言葉を頭の中で繰り返した。








それは君との冗談交じりの甘い約束。


Fin.