「琴、今日は学校で何もなかった?」
……ハッと、現実に戻される。そうだよ、思い出に浸ってる場合じゃない。
今朝お母さんにだって言われたじゃない。遥が倒れたのは私の責任なんだから。
これ以上また失敗を繰り返すわけにはいかない。目を離さずに見てないと。
「……何も、なかったよ」
『何かあった?』ではなく『何もなかった?』と聞いてくるのは、きっと遥の気づかいだろう。
私に友達がいないこと。遥がいなきゃひとりぼっちだってこと。
きっと全部知ってるんだよね、遥は。
「あっ……」
ふと、今朝のことを思い出して声を漏らしてしまった。
「ん?」
それに気づいたのか、遥が首を傾げて透明な瞳で私を見る。



