「先生!お本よんで!」
無邪気な笑顔で、そう言ったのは
八桜(やお)・ウォーカーだった。
手に持っているのは、中年の先生でも分からないような、難しい本。
当時のヤオちゃんは10歳。
カナダの孤児院にいたらしいけど、その当時の孤児院の先生がヤオちゃんのトラウマになり、日本の孤児院へ引っ越して来た。
養子の親もヤオちゃんの双子のお兄ちゃんもいるらしいけど...
全部説明したら長くなっちゃうな...
「ごめんね〜、ヤオちゃん、今は読んであげられないな〜。」
仕方なくそういうと、悲しそうな表情で
「は〜い...」
とつぶやいた...。
この表情を見ると胸が苦しくて苦しくてたまらなくなる...いつも、ヤオちゃんは外で寝る。
自分の意思で、森の熊と一緒に寝てると言ってたかな?
ある意味凄い...
ここから、10キロも離れてる所の森で寝ているそうな...
雪が降らないだけ、ありがたい。
ヤオちゃんはいつものように外に行ったけど、今日はちょっと外で違う事をするみたい。
だって、いつもは本を持っていかないもの。