下宿屋 東風荘

買おうと思っているのはお気に入りの色の紫と赤。
ただ気に入る色目があるかどうかだけだ。
店に入り、反物を見せてくれと色目を言う。

「こちらなどいかがですかな?」と老店主に言われみるが、違うと首を降る。

「これよりもう少し淡い色味のものは無いですか?」

「それではこちらは?」

見せられた反物の色はいうことは無いが、全身淡いのもどうかと思い、仕立てと染め直しを頼む。

「袷はこの赤を。そして、裾に向かって黒紫になるようにしてください。羽織りはこの色のままで結構」

金額を聞き手付を置いて店を後にし、魚屋へと行く。

「魚臭い……」

「これ、そんなことを言ってはいけないよ?いつも食べている魚はここの魚なんだから」

「そうなの?スーパーとか行かないの?」

「鮮度が違うんだよねぇ。こっちのが断然美味しい」

「へぇ」

魚を見ながら、スズキや鮭、ししゃもに鯵。秋刀魚とアサリとホタテを買う。

「毎度!後、今なら石鯛がお得だよ」

「そうですねぇ。なら刺身用にさばいてもらえます?」

「あいよっ!」

「つまみでしょ?」

「ええ。君たちのは、最近覚えたメニューにしようかと」

「今夜?」

「そうです。魚好きでしょう?」

「うん。前まで骨が沢山あるのが嫌だったけど、慣れたよ?」