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夢を見た。

あのとき交わした約束の、夢を。



「……ん、」



小さく、声を漏らして。

ゆっくりまぶたを持ち上げると、そばで何かが動く気配。それが千瀬だと気づいて声をかけたら、彼はこっちに視線を流す。ぱたんと、ファイルが閉じられた。



「起きた? 具合どう?」



「ちょっと……マシ、」



少なくとも、意識はたもってられる。

正直にそう伝えたら、頬に触れる千瀬の手。



「ちょっと熱引いたかな」と声にした彼に体温計を渡されて、それを待つ間にぽつぽつと会話する。

結構長く眠っていたようで、もうお昼らしい。




「お粥食べれそう?」



「ちょっとお腹すいた……」



「ん。なら作ってくるから。

俺がもどってくるまでお利口に待ってて」



子どもをあやすような口調でなだめてくるから拗ねたくもなるけど。

待ってる、とうなずいたわたしに彼が触れるだけのキスをくれたから、結局文句は言わなかった。



白粥があまり好きじゃないわたしのために、千瀬は食べやすいお粥にしてくれる。

味付けも変えてくれるし、中身の具だって身体に優しいものを入れてくれるから、いつも美味しく食べられる。



そういえば熱があるとき、なぜかいつもわたしのお粥をつくってくれるのは千瀬だ。

……お母さんは白粥かうどんのどちらかで、手抜きだもの。



寝たおかげで朝よりは下がった熱。

それでもまだ熱と言えるほどには高くて、千瀬がもどってくるまでごろごろとベッドの上でのんびりする。何気なく触れたスマホの画面に、『砂渡ミケ』という表示があって、『彼と仲直りできた?』とメッセージが来ていた。