荒ぶる心情とは裏腹に、甘いキスを落とされて冷静でいるしかないわたし。

ずっと指を絡めたままだからさすがに手の内がじんわりと汗ばんできて、離したくなる。



だけど離してもらえなくて、キスの合間に彼がこぼす吐息に、もはやときめきなんてレベルじゃない。

ドキドキしすぎて千瀬の顔を見るのも恥ずかしい。



「ん……、莉胡、」



「っ、」



「かわいい。

……そんな恥ずかしそうな顔されたら、もっといじめたくなるよ。あんまりそういう顔しないで」



誰か……! 誰か千瀬の甘さを止めて……!

恥ずかしいんですけど!と本心の叫びも、ぜんぶ千瀬のくちびるで受け止められるだけ。



それでも……やめて欲しくはない。




「ちせ、」



甘えるように名前を呼べば、目を細めてまぶしそうな顔。

熱のせいでかいた汗がじっとり濡らした前髪を掻き上げられて、彼を見上げるたまらないアングルに、ときめきだけは増加する。



「……熱あるのが惜しいな」



「え?」



「なんでもない。

あーも…、とりあえず今日ちょっとキスしまくっていい? ほんと全然足んないし、」



キスしまく……えっ……!?

さっきからもう十分すぎるぐらいしてるのに。まだまだ足りないの!?男の子ってそんなものなの!?と驚愕で目を見開けば、ちょっと赤い千瀬の顔。



ああもう、そんなちょっと照れくさそうな顔で、わたしにそんな甘い視線を向けないで。

……だめだ、熱が、上がってしまう。