「莉胡ちゃん、いままで以上に女の子らしくなったな」と、千瀬パパは言ってくれたし。

この間また実家に顔を出していたちあちゃんにばったり会ったら、「さらにかわいくなったね」と言ってくれた。



千瀬以外の七星家の男性はすごく優しい。

……もちろん、千瀬も優しいんだけどね。



「グロス塗ってもキスしたら落ちるじゃん」



「ッ、」



「それとも抱きついた時に顔押し付けて、

俺の服にマーキングでもするつもり?」



「な、っ……そんなことしないわよ」



そもそもそんな発想なかったんですけど……!と。

鏡越しに幼なじみと目が合ったかと思うと、千瀬がわたしの手からグロスを奪い取った。




「ちょっ……かえして」



「こっち向いて。

莉胡は元からくちびるの発色良いんだし、薄めのピンクでも濃く見えるから塗らなくていいんだって」



そう言いつつグロスのキャップを外した千瀬がわたしの顎先を掬うように持ち上げたかと思うと、くちびるにグロスを乗せる。

……なんていうか、ちょっと恥ずかしいんですけど。



文句は言うくせに結局わたしのわがままは聞いてくれる千瀬。

グロスを乗せたくちびるの上を、千瀬の指が滑ったかと思えば。



「ん。これで十分。

グロス使うんだったら、莉胡は透明使った方が絶対かわいく見えるよ」



「あり、がと……」



余計なグロスを指で拭ったらしい千瀬からグロスを受け取って、キャップをつける。

指についたグロスをティッシュで拭った千瀬は、「じゃあ行くよ」とようやく準備を終えたわたしに声をかけた。