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「莉胡起きなよ。遅刻する」



「ん……もうちょっとだけ」



「暑くも寒くもなくてこれ以上ないぐらい起きやすい日が続いてんのに、なんで起きれないの」



あきれた声が、降ってくる。

わたしの、だいすきな幼なじみの声。



一応目は覚めているけれど布団の中が心地よくて起きられないわたし。

はあ、とあきらめたようにため息をついた彼は、すっかり元の色にもどったわたしの黒髪を撫でる。



「今日のクラス替え、

楽しみにしてたんじゃなかったの?」



うん、と小さくうなずく。

ずっと一緒にいる千瀬はもちろん、由真ちゃんや累のみんなとも同じクラスになれるといいな、と楽しみにしていたのは事実だ。




「また遅刻するよ、莉胡」



「いま何分……?」



「8時」



「……準備します」



前までは、あと10分寝られていたのに。

由真ちゃんがお誕生日にメイク道具を一式をくれてから、てっきりハマってしまって。校則ゆるめのわたしの学校では、メイクしているのがバレても何も言われない。



だから学校にもメイクしていくのに、去年よりも起きる時間がはやくなってしまった。

……というのも、こんな性格のわたしを見せられるほど近い距離の千瀬にも、ちゃんとかわいいと思って欲しくて。



メイクすると言ったときは「莉胡には早いよ」と言われたけど、最近は何も言われなくなった。

新しいグロスに変えて、どう?と聞いてみたら、「かわいい」と言ってくれたりもする。