めずらしいお褒めの言葉。
千瀬が素直に言うのなんてめずらしい。あらちーくん、ミヤケさん固まっちゃってますけど?
「莉胡……
いま千瀬、ありがとうって……」
「言ったわね。
よかったじゃない。いつも貶されてばっかりだし」
「ツンデレだよなあお前……!
ツン99%のツンデレだよな……!でもなんか1%のデレもらったらなんでも許せるわ。あーびっくりした。……俺女だったらお前に惚れてる気がする」
「気持ち悪いし嫌なんだけど……」
「そしたらわたしとミヤケで取り合いよね。
……絶対千瀬のことは渡してあげないけど」
倉庫に引き返しながら彼の腕に腕を絡めて、ミヤケに「べー」と舌を出しておく。
仕返しと言いたげに「俺も譲らねえからな!」とミヤケは言ってたけれど、結局千瀬に「お前気持ち悪いって」と一蹴されていた。だからわたしの勝ちだ。
ガラッと倉庫の入口横にある勝手口のドアを引いて。
中に入った瞬間。──耳を劈くような音が鳴る。ばちばちと音を立てたそれがクラッカーだと知ったのは大量の紙テープが宙を舞ったあとで、倉庫内には火薬の匂いが立ち込めた。
「……え、びっくりした」
「あれ、千瀬がめずらしく驚いた顔してる」
「いや、普通にびっくりするんだけど。
……なんだろうね。ちょっと呆然とした」
人っておどろくと固まるものだね、とマイペースな千瀬。
そんなわたしたちのもとにやってきたのは千音とハルトで、「おめでとう千瀬」と手渡される花束と。
「おめでとうございます千瀬さん。
めちゃくちゃ悩んだんですけど、月霞幹部からのプレゼントは莉胡さんとおそろいのグラスにしました」
ハルトが手渡すのは高級そうな箱。
名前入りですよー、と彼は笑ってくれるけど、どうしてわたしとおそろいなの? ……いや、うれしいからありがたく使わせてもらうけど。



