「……敵わない」



唐突な気分の悪さは、莉胡の言葉で途端になくなる。

敵わないと思いながらも、やっぱりそれが心地よくて。抱きしめてくれる莉胡の胸に顔をうずめて、目を閉じた。



「……じゃあ、俺に自信ちょうだい」



「……千瀬」



「俺が"いちばん"だって自信」



ちらっと目元だけを上げてくぐもった声で強請れば、「ずっと千瀬がわたしのいちばん」と囁いてくれる莉胡。

正直それだけでもうれしいけど。足りなくなって「キスは?」と言えば、文句も言わずにしてくれた。



……時間なんかに、こだわらなくても。

莉胡がくれる"言葉"と"愛情"は、俺だけのもの。




「好きだよ莉胡」



「うん、わたしもだいすき」



「……俺のそばにいて」



求めれば求めた分だけくれる。

物足りないと感じる時はもちろんあるけれど、もう俺の一方通行な片思いじゃない。……莉胡の、"いちばん"だから。



「……ミヤケたちに連絡しようか。

白葉の正体が、ようやくわかったって」



「ふふ、うん。

……千瀬なら、だいじょうぶ」



電話すると言ったらさすがに腕は離されたけど、俺を安心させるみたいにずっと横にいてくれた。

……今だけじゃない。莉胡はいつだって、俺のそばにいてくれた。──ずっと、ずっと前から。