あなたに捧げる不機嫌な口付け

思い当たってやかんを確認すると、確かに沸かしたような形跡がある。


「諏訪さん、豆挽くからカップの準備して」


作業は等分するのがいい。


頼めばやってくれるから、説明書を熟読した分を考慮して、同じくらいの作業量をお願いすると。


「しといたよ」


……諏訪さんはこういうところがいい。


嬉しくなって少し笑った私に、一瞬沈黙した諏訪さんが、ぐっと距離を詰めて。


「ありが、…………何するの」


お礼を言いたくなくなるから切実にやめてくれないだろうか。


というかせめて、と、まで言わせてくれないだろうか。

う、までではなくても、そうしたら何とかお礼の形になるのに。


「したくなって。はい、カヌレ」

「したくなって、じゃなくて。カヌレはあっちに持ってっといて」


……はあ。


したくなって、とかいうふざけた理由で私は納得しないからね。


あとほだされそうになるから、カヌレを狙って差し出すとかほんと反対。

反対ったら反対。