あなたに捧げる不機嫌な口付け

予想はできても回避はできないところが、いかにも諏訪さんらしい難点の、上手い手。


こちらに心内を見せる気がない手だった。


それにしても。


祐里恵は? なんて、諏訪さんもつまらない返しをする。


「ないよ。私はあなたに恋してなんかいないから」


諏訪さんは肩をすくめて軽口を叩いた。


「知ってるけどさ、もっとオブラートに包もうか」

「知ってるなら甘えさせてくれるのが度量でしょ」

「祐里恵が甘えたいならね。違うじゃん」

「まあ、そうかもしれないね」

「そうなの、祐里恵は」


甘えたい、というある種の弱さは、諏訪さんを結構心に留めている証拠だ。


せっかく甘えたい論を微妙に認めたっぽく見せかけたのに、違うと断定されてしまった。


残念。


「……まあ、とにかく、だ」


引っかかってくれなかったので少しばかり拗ねる私を置いて、諏訪さんがなかなか強引に話を引き戻す。


「協力するって意味で俺たちは恋人関係だ。もちろん情熱なんかないけど俺は祐里恵が好きだし、祐里恵も俺が嫌いじゃないだろ」