あなたに捧げる不機嫌な口付け

とりとめもない話をしながら、シュークリームを食べ終わった。


ゆっくり味わって食べて、紅茶を飲み終わった頃には、三十分経っていた。


片付けを手伝うと、やることがもうない。


どうしたものか。……帰ろうか。


「祐里恵、こっち」


私の性急な考えを遮るように、ソファーで寝転がって脚を組む諏訪さんに呼ばれて、あけられた隙間に座った。


……帰ろうと思ったのが、そんなに顔に出ていたんだろうか。


「狭い。起きて」

「はーい」


小さく身動ぎした私に、器用に腹筋だけで起き上がった諏訪さんは軽い返事をした。


そしてなぜか、脚を支点にくるりと回って、私のすぐそばで再び脚を組む。


起きて欲しかったのは、寝転がった諏訪さんがソファーを占領していて座る場所がほとんどなかったからなんだけど。

諏訪さんが隙間をあけて座ってくれないと、私が座る場所は狭いままだ。


これでは寝転がっていたときと変わらない。


「暑苦しいんだけど」

「いいじゃん」

「よくない」


この部屋の暖房そんなに高く設定してないし気のせい気のせい、とか言っているけど、明らかに諏訪さんのせい。


「密度が高い」

「えー」

「くどい」

「えー」


本当はこの巨体を押し退けたいのだけど、そうした途端に手を取られて大惨事になりそうだから控えている。


とりあえず睨み上げる私に、諏訪さんの笑みが深まっていくのが不可解だ。


睨んでいるのに喜ぶとか変態なんだろうか。