あなたに捧げる不機嫌な口付け

「やだー! 俺、高校生にお金払わせんのすんごいやだー!」


何だ、そんな理由か。


安堵して、退行しているような気がする言動を繰り返す諏訪さんの説得を試みる。


「この関係に高校生とか大人とか持ち込む必要はないと思うけど」


あ、あのお店のお菓子美味しそう。いい香りがする。


見つけた小ぶりなお店に入ろうと、通話を終わらせることにした。


大人の矜持があああ、とか何とか騒ぐ諏訪さんはもういい。放置しよう。


「うるさい大人、いいから大人らしく高校生の体面を保って」

「レシート! レシートちょうだいその分払うから!」

「要望ないなら適当に買ってくね、じゃあまた後でね」

「祐里恵待ってほんと待って、買わ」


若干噛み合わない会話を強引に切り上げて、終了する。


ちなみに諏訪さんは最後まで何か訴えていた。


……あちらに着いたらちょっと譲歩するべきかもしれない。ごめん。


最終的にシュークリームにしたのは、諏訪さんを鑑みてのこと。


シュークリームなら比較的安価なものが多い。実際、一番安かったので。


ものによるけど、ラッピングされたクッキーなどよりも安い場合もある。


所持金ぎりぎりにしてみようかという案は、さすがに諏訪さんが騒ぎそうだったのでやめた。