あなたに捧げる不機嫌な口付け

ひたと見据える諏訪さんに、こちらも間髪入れずに切り返す。


「いいえ、そうだよ。解決する」

「いや、違う。そうじゃない」

「違くない。私を切れば全てが解決する」


繰り返すと、諏訪さんは首を横に振った。


「しないよ。それにそもそも、解決しなきゃいけないことなんて、何もないだろう」


諏訪さんは、実に淡々とそう言った。


……何を言ってるの。私は高校生なんだよ。


全身が熱いような、頭が冴え渡っているような、冷えた高揚を押さえつけて、どういうことかと無言で問えば。


「悪いね、祐里恵」


諏訪さんは不遜に笑った。


「残念ながら、俺は祐里恵を諦める気は全くもってない」


決して悪いとは思っていない顔つき。


楽しげに弾む声が、ゆっくりと、知らしめるように前提を吐き捨てる。


——祐里恵が高校生? 知るか。


「そんなの、初めから知ってたんだから」

「……は?」


聞き返した先で、諏訪さんは柔和に微笑んでいた。


まるで、何でもないことみたいに。


「ずっと、知ってたんだよ」