あなたに捧げる不機嫌な口付け

ちらり、アイスに固定していた顔を上げる。


「ん? 何、祐里恵」

「……別に」


諏訪さんとがっつり目が合ってしまって、急いで逸らしたけど。


会ったときから綺麗な色だと思っていた。


諏訪さんによく映える髪色は、やっぱり明かりに透けると一段明るくなって、一際綺麗だった。


先の細い猫毛はふわふわと遊んで、整えているのか整えていないのか、判断しがたく緩い。


私の髪は巻いても編んでもくせがつかない直毛で、太くもなく柔らかくもなく、結局そのまま下ろしているのが一番収まりがいいから、諏訪さんの髪が少し羨ましかったりする。


大分明るく染められた髪色は、あつらえたように諏訪さんにとても合っていたし、何より光が当たるときらめいて綺麗だ。


諏訪さんの強引さは得意じゃないけど、容姿は際立って綺麗だと思う。


綺麗なものが好きな私が綺麗だと連呼するのだから、おそらく私にとって、彼の外見はものすごく好みだ。


でも。


「そうだね」


少し考えて、捻くれたことを言った。


「……私の好みは、諏訪さんじゃない人かな」

「えええ」


大雑把すぎると唇を尖らせた諏訪さんが抗議した。


「明らかに俺だけ除いてるじゃん」

「諏訪さんを除きたいんだからいいの」

「ひどい」


騒ぐ諏訪さんが、「俺を除いてもいいけど、もうちょっと具体的に答えてよ」と繰り返す。