あなたに捧げる不機嫌な口付け

「ねえ、祐里恵」


短いくせに何だか妖しさが滲みまくっている。危ない。絶対危険。


「少なくとも懲りない人は嫌いかな」


だいだい意味は察せるので、さらっと軽口を被せて止める。


どうして毎度のようにそういう話に持っていくのか、本当によく分からない。


普通に話していたと思ったらこれ。途切れない話題に感心していたのに。


確実に情報収集のためだろうけど、収集して傾向を分析して努力する前に余計に嫌われるから、そういう無駄なことは止めた方がいいと思う。真剣に。


遠回しな言い回しは気づくかどうかを試しているのだろうから、相手が気づいても気づかなくても、内容的にも口調的にも煽りそうだし。


いや、私で遊んでいるのかもしれないけど。


十中八九そうだから……遊ばれてるのか、私。


「初めに断っておくと、諏訪さんは好みと違うから」

「ええーひどーい、じゃあ好みってどういう人?」


牽制のつもりで適当に言ったから、何も考えていなかった。虚を突かれて黙り込む。


……別に、好みとかないんだよね、私。


男性は、ある程度顔が整っていれば、かっこいい括りに入る。


友人が騒ぐ芸能人も皆かっこいいと思うけど、この人が好き、とは思わない。


強いて言うならこの人の方がかっこいいかな、くらい。


今まで付き合ってきた人たちにも見事に共通項がない。


とりあえず流されてきたから、付き合うのは相手から告白されたときだ。