あなたに捧げる不機嫌な口付け

「諏訪さん、私に怒ってて欲しかったの?」


私に。女子高生に。


「つまり怒られたかったの? 変態だね」


うわあ、と吐き捨てれば。


「違う!」


きっちり主張して、弁明の途中で何だか妙な顔をした諏訪さんは、そっと口元を緩めた。


何だろうか。


視線を向けて聞くと、諏訪さんが改めて微笑んだ。


「……祐里恵はいい人だね」

「どこが。そんなことない」

「いや」


ぶっきらぼうに否定したけど、首を振って否定を返される。


——君はいい人だよ。


低い訂正はひどく響いて聞こえた。


イートインスペースがあるのを確認してから立ち寄ったコンビニで、思惑通りに一番お高いアイスを二つ選ぶ。


たまの贅沢にしか食べないカップアイスだ。


「あれ、祐里恵コーヒー飲むの?」

「うん、でもこれは自分で払うからいいよ」

「それくらい俺に払わせてよ」


アイスを二つも買ってもらうならやっぱりコーヒーは自分で追加しようと思ったら、にっこり笑顔でカゴに入れられてしまった。


あああ間違った、絶対コーヒーのボトルを選ぶタイミング間違った……!


俺の方が年上でしょ、とか言わない辺り、本当に諏訪さんは奢ることに手慣れている。