あなたに捧げる不機嫌な口付け

「祐里恵、ごめんって……」


こんな地味な嫌がらせの割に食らっているけど、知ったことではない。


うがいしてすっきりした後、借りたコップを洗って拭いて、差し出された手に押しつける。


しまう場所は分からなかったからちょうどよかった。


「帰りにアイス奢って。送ってくれるでしょ?」


追い討ちをかけるべく要求する。


もう暗いし、多分諏訪さんのことだから、私を一人で帰しはしないはず。


自分の仕返しがしょぼいのは分かっているけど、高校生なんだから仕方ない。


思った通り、諏訪さんはあっさり頷いた。


「もちろん。祐里恵がいいなら送ろうと思ってたし」


往復したら結構時間を使うのに、嫌がりもしないのだから諏訪さんも大概暇人だ。


床に置いていた鞄を回収したところで。


「でも、もっと高いものじゃなくていいの? バッグとか財布とかアクセサリーとか」


……質問がちょっとよく分からない。なにいってるのこのひと。


バッグ? 財布?


どうせブランド物だろう、大人ってなんて怖いんだ。


散財してしまうし、そしたら責任なんて取れないし、そもそもそんな形に残るものいらないし。


消えるものじゃなきゃ処分に困る。


……いろいろ考えてしまっている辺り、動揺してるなあ、私。