あなたに捧げる不機嫌な口付け

「っ」


また奪われた唇を半ば強引に引き剥がす。


今度こそしっかり距離を取って、じろりと諏訪さんを見上げた。


せめてちゃんと言わせて欲しいし、諏訪さんが狙ったのは分かるけど、そうそう何度も我慢できるものでもない。


「嫌な人だね」


払われた手を浮かせたまま、諏訪さんはひたすら微笑むばかりで答えない。


私相手なら謝らないのは極めて正しい。


容姿が美しくて、その自覚があって、切れる頭を持つ諏訪さんは、簡単には楽しませてくれない。


……美しい笑みに鉄拳を食らわせたい。鼻血でも出したらいい。


でもさすがにぶん殴るのは駄目だ、と拳を解く。


怒る代わりにまなじりを吊り上げた。


「紳士はどこ行ったの。許可ぐらい取ってよ」

「分かった、次から取るから。というわけで、キスしていい?」


ここで許可取るとか、どういうことだ。


でも、怒気が削がれたのは確かで。


狙って言ってるんだろうなあ。


私は今度は隠さずに溜め息を吐いて、小さな子どもみたいにふて腐れて返事をした。


「……好きにすれば」