あなたに捧げる不機嫌な口付け

上げたい叫びを無理矢理溜め息にする。


聞こえないくらい押さえた長い溜め息の後に、震える吐息がもれた。


一拍して、もう一度溜め息を吐いて。


焦りと戸惑いと怒りと、何か、胸を押し潰す感情をついでに吐き出す。


うるさい心臓は知らないふりをした。



「…………何を、するの」



溜め息に無理矢理溶かし込んで隠した諸々は、読み取りやすかったらしい。


目を伏せた私を静かに伺っていた諏訪さんは、からかう目的でか、意図的に口にした。



「契約違反?」


「そうだね」



契約違反に決まってるでしょう、定義を忘れたの? と詰らないように最大限気をつけた声色に、諏訪さんはへらりと笑った。



「まさか祐里恵が、キスくらいで食らっちゃうとは思わなくて」


う、わ。



「…………」



しらっと馬鹿にしてきたので、とりあえず表情を消した。


ムカつく。でも黙っておいた方がいい。
でもムカつく。


「ごめんね?」



わざとらしく眉を下げる諏訪さんに、渋々こちらが折れた。



「……いいよ、犬に噛まれたとでも思ってお」



あいている諏訪さんの右手がさらりと頬を撫でた——その瞬間に前触れなどなく。