あなたに捧げる不機嫌な口付け

「コーヒーお願いします」

「了解。ちょっと待って」


ふんふーん、ふんふふーんと調子外れな鼻歌が聞こえてきたので、多分諏訪さんは紅茶が好きなんだろう。


やかんがけたたましく鳴った。


「諏訪さん」

「んー?」

「手伝う?」


……ずっと座ったまま何もしないで待つのは案外辛い。


カップを温める諏訪さんに、さすがに申し訳なくなってきて躊躇いがちに聞いたけど、明るい声が返ってくる。


「ん? いいよいいよ、ゆっくりしてて」

「……うん」


朗らかに遠慮されてしまった。


そういえば諏訪さんって、母音を伸ばすよね。いいよ、もいーよ、みたいになるし。

なんて分析している辺り、私はよほど時間を持て余している。


でも、大丈夫だと言われたのに手伝うのは気が引けて。


でも。


るるるるぅー、とルの音で変な音階を口ずさむ諏訪さんに、浮かしかけた腰を落とした。


気が抜ける下手くそさだ。歌はあまり上手くないらしい。


……お言葉に甘えて大人しくしていよう。


諏訪さんをチラ見しつつ、ふかふかのソファーにスマホ片手に体を沈めた。