あなたに捧げる不機嫌な口付け

性別は刈る側と刈られる側に大別する。

多くの生き物が捕食者と被食者に括られる。


でも私は、大人しく捕まるほどお人好しじゃない。


足掻けるなら足掻け。

反撃できるなら反撃を。


「……ねえ、これは何」


努めて静かに聞く。


冷めているのが意外だったのだろうか。

諏訪さんは一瞬目を見開いたけど、それだけだ。


「男の部屋に一人で入ることの危険を教えてるんだよ」


艶やかに笑って屁理屈を言った。


「教えていただかなくて結構。早くその手をどけて」


即答して、非難を向ける。


「それに、連れ込んだのはどっち」


私を連れてきたのは諏訪さんだし、その手段も強引で、どうせ逃げても意味がないから、この関係を始めた意地で私はここにいるのだ。


ねえ、諏訪さん。


今さら前提を覆すほど、あなたはひどい人ではないでしょう?