あなたに捧げる不機嫌な口付け

知るか、でごり押ししよう。


「どうかな」


諏訪さんこそ本当に待ってるの、と言下に聞けば、綺麗な笑みを向けられる。


「どう思う?」


だから知らないってば。


貼りつけた面のような硬い微笑みに、私も笑顔を貼りつける。


「どうなの?」

「……さあ、どうなんだろうね」


小さく呟きを落として、諏訪さんはなかなかにさりげなく話題を変えた。


困ったときはとにかく相手に質問を返していれば、諦めるか、自分が望む答えを自分で言うので、次の対策が取れる、はずだった。


対策を取らせてくれるほど、簡単ではないらしい。


——諏訪さんはあやふやなこの関係をずっと支配している。


始めたのは諏訪さんで、終わらせるのもきっと諏訪さんだ。


面倒臭くない……のは無理かもしれないけど、一度始めてしまった以上、ちゃんと終わらせよう。


退屈しないなら充分だ。


もう暗くなった頃、諏訪さんの住むアパートに到着したのだった。