あなたに捧げる不機嫌な口付け

「そっかあ。俺、もしかして後一年くらいは待つことになるかなあ」


恭介さんは優しく笑ったけど、やっぱりちょっと、今日にでも早くサインして欲しかったらしい。


若干残念そうだ。


「ちゃんと考えてくれるのは、祐里恵の良いところだけどね」


そうしたら親御さんにもご挨拶に行きやすいしね、なんて。


心境を見透かしたかのように、かがんできちんと私と目を合わせてからフォローする辺りは、さすがの付き合いの長さだった。


後一年ということは。


「高校卒業するまで待ってくれるの?」

「まあね。でも逃がす気はさらさらないからな。覚悟してよ」


覚悟、なんて。とっくに。


……馬鹿。アホ。間抜け。


きょうすけさんの、くせに。


優しい恭介さんがわざとらしくニヤリと口角を上げるから、私は強気に流し目を送った。


お返しにお返しの連鎖、なんて。


「はいはい。——まあ、頑張って貢いでよね、恭介さん」


————————こちとら、逃げる気はさらさらないけどね。


意地っ張りと意地っ張りの攻防は続く。



Fin.