あなたに捧げる不機嫌な口付け

伏せた目を上げる。


「分かるでしょ、祐里恵。キスする意味も、手を繋ぐ意味も、家に上げる意味も」


照れた笑い顔。


「全部同じだよ」


全部同じ、が何を指しているかなんて、それくらいは分かる。


視線が絡む。


「祐里恵。好きだって言って信じてもらえないのはちょっと悲しいよ」


俺、結構諦め悪いんだけどな。


困り顔。


「この関係は遊びから始まったけど、ねえ、祐里恵」


呼びかける恭介さんの鳶色にことさら視線を合わせる。


何度も私を呼ぶのは、大事な話だからだ。


恭介さんは話をしっかり聞いて欲しいときは特に、ちゃんと名前を呼ぶ。


うん、とかすれた相槌を打った。


「お願いがあるんだ」


節の高い指が、ぎこちなく私の手を握る。


「利益も効率も遊びも関係なく、俺のそばにいてよ」