あなたに捧げる不機嫌な口付け

相変わらずひどい人だ。


続きを期待して傷つくのは私。


私は替えなんてきかない。でも、恭介さんはいくらでも替えがきく、かもしれない。


どんなに好きだと言われても、いつまで好きでいてくれるかは分からないんだって、今さらのように、毎回のように思い出す。


当たり前のことを戒めみたいに思い出して、そっと息を呑む。


「……っ」


恭介さんが今までに叶えた口約束なんて、どれほどあるか分からない。

きっとほとんどありはしないに違いないのに。


簡単に約束だけは結んでみせるから、本当にたちが悪い。本当に。


「ねえ、祐里恵」


恭介さんがどこまでも優しく笑う。


やめて。後生だから、それ以上言ってくれるな。


耳を塞ぐのは両手を封じられて無理だったから、代わりに目を強く閉じた私の耳元で、恭介さんは実に耽美に囁いた。


「約束をしようか、祐里恵」

「…………約束なんていらない」


唇を噛み締めて、ぐっと耐える。


確約でない口約束をいくら結んでも意味がないだろう。


「俺の気持ちが分からない?」


恭介さんは静かに問いかけた。


その質問になんて答えればいいか必死に考えて、思いつかなくて、ひたすら曖昧に流す。


「……そうかも、しれないね」


うん、と恭介さんは小さく相槌を寄越して呟いた。


「俺が祐里恵を好きかどうかは、離れずにいる意味を考えてよ」