あなたに捧げる不機嫌な口付け

えーと。


……一応、これでも初対面の日に堂々と浮気宣言なんて、どう捉えるのが正解なんだろうか。


私これ、前言撤回して帰っていいかな。もう何かいろいろ面倒臭い。


器用じゃない人は絶対にやっちゃいけない遊び方だな、と横目で見遣る。


見たところものすごく器用そうだし、上手く調整しながら回してるんだろう。


私は別に傷つかないけど、もしこれで意外に傷つく繊細な神経の持ち主だったらどうしたのだろうか。責任とか。


「全然。お好きなようにどうぞ」

「そ? ありがと」


適当に了承すると、諏訪さんも軽くお礼を述べて、でも諦めずにもう一度質問してきた。


「……慰めてもくれない?」

「慰めるくらいはするけど、私みたいなのが必要なときだけね。他の人に基本は慰めてもらって」


この場合の慰める、は、おそらくそういうことだから。


私は面倒だから嫌。

どうせ慰めてくれる人は他にもたくさんいるのだろうし、その方々に頼って欲しい。


「よろしく」

「……りょーかーい」


諏訪さんは大袈裟なほどに大きく、はあ、と溜め息を吐いた。


「あ、連絡先教えて。さっき断られたけど不便だしいいよな?」

「…………」


なんでそういう話題転換をするかな。


浮気と個人情報が同列か。ちょっと嫌だ。