あなたに捧げる不機嫌な口付け

「随分紳士的なんだね」


まずは様子見が必要だろう。


ひとまず伺う私に、諏訪さんが笑みを張りつける気配がした。


「まあね。俺はいつでも紳士だよ?」


その怪しい自己申告を聞き流して、ふーん、と素っ気なく横を振り向くと、やはり薄っぺらい微笑みが張りついている。


まあ、紳士でも何でも、私にはあまり関係のないことだ。


「まず第一に、お互い不干渉」


とりあえず頷いてるし不満はない、と。


次の確認事項。


「第二に不束縛」


親指、人差し指を順に曲げて、指折り数えながら諏訪さんを見遣る。


これも問題なし。次の確認事項。


「第三に、清いお付き合いをしましょう?」

「……は?」


中指を折り曲げて言い放てば、貼りついたままだった諏訪さんの笑みが、ようやく崩れた。


「ちょっと待って、それどういう意味」

「どういう意味って、当然、字面の通りの意味」


清いお付き合いをしましょう。


ね、諏訪さん。