あなたに捧げる不機嫌な口付け

よし、あとは切り替えが肝要だ。


仕方ない。教えちゃったし、一応パスワード変えよう。


「恭介さん、ちょっとこっち寄らないでおいて」

「え、うん分かった」


即顔を背けて離れてくれた律儀な恭介さんは、ああ、と思い至ったらしい。


遠い質問が飛んでくる。


「やっぱりパスワード変えるの?」

「うん、まあ」

「俺ってそんなに信用ない?」

「どうだろうね」


正しくは、信用しないようにしている。


初めは不満そうにしていたけど、説明が必要なほど察しは悪くない人なので、パスワードを変える間に考えついたらしく、それ以上騒がないでくれた。


「終わった?」

「うん」


スマホを置いて、冷めてしまったコーヒーを一口飲む。


手があいていると分かりやすく示すと、恭介さんはまた近寄ってきた。


「暑い」

「俺はちょうどいい」

「私は暑い。離れて」

「やだ」

「…………」


ゼロまで距離を詰めてきた恭介さんを押し退ける。


えっと、こういうときはあれだ。

何か理由つけしないとこのままだ。


どう言おうかな、と言葉を選ぶ。