あなたに捧げる不機嫌な口付け

恭介さんがにこにこと嬉しそうに笑う。


「祐里恵って秋なのかー! うんうん、似合う似合う!」

「よく言われる」

「俺、絶対お祝いするから。ぜーったいするから!」

「しなくていいよ」

「なんでさ! けち!」

「えー……」


余りにも予想通りの反応に、つい溜め息がもれる。


……お祝いなんて、しなくていい。


だってつまり、それまで一緒にいるということで。

今は冬なのに。


お祝いするというのは、ほとんど一年一緒にいようというお誘いに他ならない。


深読みしすぎだとは思わなかった。


恭介さんなら、そういう意味で言っていると相場が決まっている。


お祝いはしなくていい。約束はしなくていい。


このままでいい。そのままがいい。


恭介さんを信じ込んで盲目するのは嫌だった。


暗闇の中灯りに集まる蛾は、全て焼け焦げて死んでしまうものだ。


私と恭介さんを比べたら、きっと私の方が弱い。


辛いのは私だ。信じて泣くのは私だ。


子どもっぽいやり方にしがみついて責任を逃れるのは、本当に子どもと明らかになるようで不本意だけど。


嫌なことをしてでも、逃げ道は残しておきたかった。