あなたに捧げる不機嫌な口付け

だけど、まあいい。


恭介さんが思いをかけるなら、私も思いをかけよう。


変えられるんだから、パスワードは変えればいい。


捻くれた私の分かりにくい好意を、きっと恭介さんは正しく汲み取ってくれるだろう。


パスワードを変えたからといって、恭介さんを蔑視しているのではないと読み取ってくれるだろう。


私は恭介さんとできるだけ対等でいたいから、曖昧なものをきちんと清算したいだけだ。


「恭介さん。顔怖いよ」


いまだ私の返答を待つ恭介さんに笑いかけた。


「あ、ごめん」


眉間に寄るしわを伸ばした恭介さんに、内緒話をするみたいに囁く。


「……私の誕生日はね、九月十八日」


本当は、誕生日なんて教えるつもりはなかった。


慣れ親しんだパスワードを覚え直すのは面倒臭い。


何より、話し相手の情報は少ない方が穏やかでいい。


身長とか体重とか足のサイズとかなら構わない。


もし聞かれたら、体重は除くにしろ、大体の質問に答える気だ。


でも、誕生日はなるべく教えたくなかった。


イベント事は思い出に残りやすいから。


きっと恭介さんは、お祝いをしてくれるから。