あなたに捧げる不機嫌な口付け

「えー、じゃあ何にするの」


拗ねた恭介さんに、変えないよと言ったらもっと拗ねられた。


スマホはいつも制服のポケットに入れているから、まあこれくらいは言っても大丈夫だろうか。


「私の誕生日」

「え、いつ!? いつ!?」


妙に食いつく恭介さんを呆れ顔で見遣る。


この大人はアホなのか。


「教えたらパスワードの意味ないでしょ」

「大丈夫、絶対見ないから!」

「その宣言を信用してって言われても」

「俺を信じてよ」

「嫌」

「ひどい!」


ばっさり切って捨てた私に膨れ面を向けてくる。


綺麗な顔をしていると、こういう変な顔でも何だか綺麗さが残っているから理不尽だ。


「信じてよ。約束する」

「嫌」

「信じてよ」

「嫌」


嫌を繰り返す私に、恭介さんは真剣な顔つきをした。


「……じゃあ、もし勝手に見たら、今後一切祐里恵と関わらない」


横目で流し見ると、ひどく真面目な表情とかち合った。


「ねえ、恭介さん」


一つ。


溜め息を、吐く。


「……それのどこを信じればいいの、私」