あなたに捧げる不機嫌な口付け

深く膝を抱えて背を丸め、耳にかけられていた髪を念入りに下ろしてから、冷たさの残るソファーに顔を押しつける。


恭介さんの顔を物理的に塞いで、騒ぐ心臓を少しでも早く落ち着けたかった。


「祐里恵」

「うるさい」

「ただいまって言ってくれてありがと」

「うるさい」

「照れてんの?」

「うるさい」


誤魔化されてはくれなかったらしい。


実はずっと照れたままなのを知られてしまった。


「祐里恵」

「来るな」

「可愛いよ」

「馬鹿」


楽しげな恭介さんに苛つく。


恭介さんも照れればいいんだ。

私ばっかり赤いなんて不公平じゃないか。


「恭介さん」

「ん?」


余裕そうに微笑んでいる恭介さんに、少し考えて吟味してから、爆弾を放る。


「好き」

「は……?」


思い切って投げた言葉は、効力が高かったらしい。


「だから。私、恭介さんが好き」

「は!?」


怪しげな微笑みが、途端に崩れた。