あなたに捧げる不機嫌な口付け

「ここはあれだよ、諏訪さん」


にっこり、笑う。


「『俺だって男だ』とか『現実を教えてやるよ』とか言って強引に私を押し倒して、

私が息を呑んで涙目で怯んだところで『ごめんな。怪我してないか』とか『痛かっただろ、悪かった』とか言って抱き起して頭でも撫でて、

『俺はお前が心配なんだ』とか言ってそのまま抱き締めて、

『な、分かったろ。次からこういうことすんな』とか『そういうこと他の男にはするなよ。危ないから』とか照れつつ苦笑混じりに言う場面だと思ったんだけど」


呆けた諏訪さんが、「……絶対襲いたくない」と失礼なことを呟いて。


「そんな恥ずかしいこと言えるかああ!」


力いっぱい、叫んだ。


「諏訪さんはそういう恥ずかしい人だと思ってたんだよ」

「違う! 断じて違う!!」


ぜいぜいと息巻く諏訪さんに素直に謝る。


「うん、ごめん」


なるほど諏訪さんは案外本当にいい人だったんだな、ということが判明した。


私の本気を誤魔化して嘘にした分は、まあこれくらいにしておこう。