あなたに捧げる不機嫌な口付け

「…………」


——残念、振られてしまった。


髪を乱してこちらを見据えた諏訪さんの顔は、弱り切った困り顔から、ひょうひょうとしたいつもの笑顔になっていた。


それはつまり、茶化しで。誤魔化しで。

いつも通り、曖昧にしようということで。


貼りつけた微笑みは、目が笑っていないから本気だ。


そんな軌道修正を拒めるほど、私は馬鹿じゃない。


……分かった。私が悪かった。


あなたが誤魔化せと望むのなら、誤魔化して茶化して冗談にしてもいい。

いいけど。残念だな。


子ども扱いじゃないから悲しくはない。


でもやっぱり、私は諏訪さんにとってその程度なのだ。


腕力でも経験でも私より上な諏訪さんが、襲うよ、とわざわざ忠告したのは。


暗に、これ以上は言うなと。契約違反だと。

こちらから持ちかけた約束は、きちんと守ってみせろ、と。


……そういうことだ。


「祐里恵、ほんとに俺に襲われてもいいの?」


確認に見せかけた茶化しを寄越した諏訪さんを、本来なら拒否しなければいけないところだけど、構わずにこちらも茶化した。


「いいよ、どうぞ? だって好きだし」


にっこり笑って告げれば。


「こんのやろー……」


真っ赤な顔で頭を抱えて口唇を開け閉めする諏訪さん、という珍妙なものが見られた。