あなたに捧げる不機嫌な口付け

諏訪さんは唇をほんの少し離しただけの距離で喋るものだから、吐息がくすぐったい。


熱っぽい眼差しの意味は、透けて見えた。


つまるところ、もう一回、だ。


「まずは手を離して、押さえるならもう少しロマンチックに押さえてくれる」


顎は苦しいから駄目。

私の場合、気道が塞がれそうになって呼吸困難になるから絶対駄目。


二回目は決定事項だと諦めて要望を出せば、了解、と素直に後頭部と腰に手が回る。


これでいい? と確認するようにこちらを見つめる諏訪さんに、少し笑って、考えた。


好きでもないやつとのキス一つにこんなに時間をかけて、たとえ暇潰しと打算だとしても、私みたいに面倒で手のかかる子どもにこんなに一生懸命配慮してくれる大人が、どこにいるだろう。


いない。滅多にいない。

私は知らない。


……じゃあ、いいや。

諏訪さんが、いいな。


眼差しで訴える諏訪さんの頬をするりと撫でて、私と向き合わせる。


重なる体温から、静かな鼓動を聞いた。


「ねえ、諏訪さん。ちゃんと聞いてくれないと分からない」