あなたに捧げる不機嫌な口付け

「ねえ、祐里恵。聞くから答えてね。していい?」

「…………」


宣言通り、頷く以外は認めないらしい。


「……すればいいんじゃない」


雰囲気に呑まれて思わずこぼれた馬鹿な返事に、慌ててつけ足しをする。


「でもその前にコーヒー、次はカヌレだから」

「キスしてからコーヒー、カヌレでしょ」


いやいやいや、なんで。

うん、あり得ない。


鼻で笑えたところを見るに、どうやらやっと落ち着いてきたらしい。


落ち着け。冷静であれ。慌てるな。


……大丈夫、まだ。


これくらいなら遊びの範疇。


私は、一番無様な形で負けたりなんかしない。


「そんなわけな、……っ」


鼻で笑われて苛ついたのだろうか、塞がれた口に、ふと気づく。


そういえば、まだ手を掴まれたままだった。


「諏訪さん、だからっ」


諸々の抗議と事情と感情を込めて見つめてみたけど、めげない諏訪さんが、朗らかに笑って屁理屈を言った。


「許可は取ったよ?」

「…………手は離してない」

「いいじゃん」


至って軽い反応に眉を跳ね上げる。


重大事なのだ、全然よくない。


「カヌレ一つ多くあげるからさ」


食いしん坊みたいに言わないで、という抗議は流された。


「ねえ、祐里恵」