「……この稀有(けう)な見た目に対し、そのような勿体ないお言葉、感謝します」

 必要以上に謙った精一杯の答え。それ以上は声にならない。代わりに目の奥が熱くなって、なにかを必死に耐えた。

 変だ。私、変だよ。ずっとこの髪もこの瞳も大嫌いで、この見た目のせいで辛い思いをしてきたのに。それをこの人は気に入っていると言ってくれて、恐れることなく大事に触れ、慈しんでくれる。

 それで十分なのに。これ以上、なにを望むの? それに、この見た目じゃないと、きっと“見つけてもらえなかった”のに。

「なにをそう卑屈になる? べつに珍しい見た目だけで、お前をこうして飼い慣らし続けているわけではない」

 王のなんでもないかのように続けられた言葉が、あまりにも今の自分の心を突いたもので、強い衝撃を受けた。ヴィルヘルムは変わらずにリラの髪に指を通して触れる。

「珍しいものを欲しがる人間が次にする行動はひとつ。それを持っているということを誇示することだ。誰かにひけらかすなりして、他の者が持っていないものを持っている自分に優越感を覚える。だが、生憎私はそういった欲望は持ち合わせていない」

 そこでヴィルヘルムはそっとリラと視線を合わせた。その手から銀の髪を解き、そのままリラの頭を、髪を優しく撫でる。 

「その見た目以上に、お前の誰のせいにしもしない強さに惹かれたんだ。それに私は、お前がどんな姿でも、どこにいてもきっと“見つけられる”」

 なにを根拠に言っているのか。そんなことあるわけない。それでもリラはその言葉を口にすることができず、自然と零れそうな涙を堪えるため、瞬きを必死で我慢した。

 そんなリラに対し、ヴィルヘルムはおかしそうに目元に唇を寄せる。まさかの行動にリラは目を瞬(しばたた)かせる。視線が交差したところで今度はゆっくりと唇が重ねられた。