それ以来私は、彼との手紙のやりとりを続けながらも、校内で彼の姿を無意識のうちに探してしまうようになった。


でも、本当は、見つけたくなかった。

だって、彼はいつも、吉岡さんのことを遠くから見つめていたから。


分かっていたことだ。

彼が好きなのは私じゃない。

可愛くて明るくて美人な吉岡さん。


あの手紙だって、彼は、彼女のために書いているのだ。


私はただ彼を騙して彼女への手紙を横取りしているだけ。

最低なことをしているだけ。


放課後、誰もいなくなった教室の片隅で、私はぼんやりと窓の外を見る。


何気なく校門へと向かう道のほうに視線を投げたら、木佐貫くんの姿を見つけた。

いつも一緒にいる仲良しの彼とならんで歩いている。


木佐貫くんが、ふいに首を横に向けた。

その視線の先には、吉岡さん。

じっと見つめている。


隣の彼が、励ますように木佐貫くんの背中を叩いた。

二人が校門に向かって歩き出す。


一部始終を見つめていた私は、がたんと立ち上がった。

荷物をつかんで、教室から飛び出す。


やっぱり、だめだ。

こんなことしてちゃ、だめだ。


大好きな彼を欺くようなこと、してちゃだめだ。


謝ろう。

謝って、全てを打ち明けて、そして……。